泉州尺八工房

 

 

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09.1.23 貴方の努力は報われていますか? 「ピッチの善し悪し」


ピッチの良い尺八、悪い尺八。

これも重大な問題です。
私の所に「自分は流体力学の専門家だ、コーラスもやっている、お前の所の楽器ですらでたらめな音程だ。もう尺八なんて信用しない。
尺八の連中はダメな楽器を耳で合わせるのだという、こんな事を強要する楽器なんて西洋にはない。まず、酒をたらふく飲み、耳栓をして、デジタル録音機で自分の演奏を録音して、それでも正確になる物を楽器というのだ。そう言う楽器が作れるようになったら大きな事を言え」というような手紙をいただいた事があります。
怒り心頭・・・・になりそうな内容ですが、物理的な思考の人なら、笑うでしょう。
この人はきっと流体力学の専門ではないでしょうし、コーラスも音痴で嫌われているに違い有りません・・・・と思ってしまいます。

ここで、ちょっと実験しましょう。
皆さん尺八を持って下さい。
全部の指を塞ぎ、歌口は口に当てずにどこかの指をポンポンと打ってください。
その音はその間に長さに共鳴している音ですよね。
もし近くにチューナーが有ったら、音程を測定してください。
1尺8寸ならDを示しそうな物ですが・・・あれ?
#が付きますね。半音ほど高く表示されます。

では次にポンポン音をたてながら、ゆっくりと歌口を口に当ててください、当てる直前に音が低くなりましたね。チューナーはDになりました。

次は空中で全部の孔を開けてどこかを打ってください、測定出来れば測定してください。
D#よりかなり高いですね。Eくらいになっています。
これもポンポン打ちながら口に当てると、およそDに落ち着きます。

この簡単な実験で次のような事が分かります。

中学校の理科の知識で充分ですが、両方開いている管と片方が閉じている官とでは、後者が前者の1オクターブ下の音で共鳴します。
尺八は両方開いていますが、実は、歌口の所は全部ではなく中途半端に閉じているので、実際の長さよりもちょっと低い周波数で共鳴しているんです。
そして、歌口に近づけると徐々に低くなりますから、閉じ方でピッチが変わる事も分かります。
そして筒音でやや半音の変化、開放でやや1音の変化ですから、歌口を口に当てると、やく3cm長くしたのと同じになっているのが分かります。
何故3cmとわかるかって?
尺八の世界では1寸半音という、アバウトな言い方があります。1尺8寸の前後ではおよそ合っていますので、一寸=約3センチということです。

全部指穴を閉じた尺八と、全部開けた尺八の音程差は1オクターブ、つまり、全部開けると、全長の半分の長さのパイプと同じ事になります。

そのパイプそれぞれ3cm長くするのですから、短い方の変化は長い法の変化の倍になります。
なので、全部締めた時の変化がやや半音に対して、全部開けたほうは1音の変化になるのです。

つまり尺八のピッチは、制作者が意図した隙間を歌口に作った時に正しいピッチになります。
その制作者の意図した隙間よりほんの少しメッて(隙間を小さくして)吹いたらどうなるでしょう?
筒音の変化はほんの少しですが、上に行くに従って変化は大きくなり、オクターブ上では、筒音の変化の倍の変化生じます。つまり音痴に鳴ってしまうのです。

という事は、その隙間を規定しない限り「正しい」はあり得なくなります。
どうやって「正しい」を見つければいいのでしょう?
まずは酒を飲んで耳栓をして・・・・決める物ではない事は確かですよね。

もし、楽器が正しいとすれば、全部の音が正しい音程になるように歌口を口元にセットするべきです。
もし、正しい吹き方が有るなら、その吹き方で吹いた時に正しい音程になるように、楽器を調整するべきです。
正しい音程になるように演奏したときに歌口に違和感を感ずるなら、その部分は修正すべきでしょう。

初心者のうちはピッチが低い・・・などと言いますが、それは仕方のないことと放っておかずに、まずどうやったら規定のピッチになるか・そのことを追求することも、歌口を正しく当てることや、正しい息の吸い方を学ぶことにつながります。
ピッチが低いから「カル」だけではいけません。
唇の緊張感や歯の開き方などが基本的なピッチに関係します。

しかし、現在この「正しい」が規定されていません。
このことを考え、毎日自分を修正し、楽器を修正しようと努力出来るのは、制作者であり演奏家である立場の人間、という事になり、その工房が生み出す楽器が比較的信用できそうだといえるでしょう。
私もその一人として頑張りたいと思います。








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